iCHi's diary~本は読みたし、はかどらず~

主に読書録。読み終えた本がこのまま砂のように忘却の彼方に忘れ去られるのが申し訳ないので、書き留める。要は忘れっぽい読者の読書日記。

圧力高め!「テスカトリポカ」

たて続けるように2022年このミス(このミステリーがすごい)2位の「テスカトリポカ」を読んだ。

うーん、独特。というか、怖い。

絶対悪という言葉が思い浮かぶような話。

 

ミステリーに期待される謎解きとか、どんでん返しとかはない。ただひたすら答えのない問題を突き突きつけられてる気がする。

 

 

メキシコのカルテルに君臨した麻薬密売人のバルミロ・カサソラは、対立組織との抗争の果てにメキシコから逃走し、潜伏先のジャカルタで日本人の臓器ブローカーと出会った。二人は新たな臓器ビジネスを実現させるため日本へと向かう。川崎に生まれ育った天涯孤独の少年・土方コシモはバルミロと出会い、その才能を見出され、知らぬ間に彼らの犯罪に巻きこまれていく――。海を越えて交錯する運命の背後に、滅亡した王国〈アステカ〉の恐るべき神の影がちらつく。人間は暴力から逃れられるのか。心臓密売人の恐怖がやってくる。誰も見たことのない、圧倒的な悪夢と祝祭が、幕を開ける。第34回山本周五郎賞受賞。

 

土方コスモ というハーフの少年がかわいそうでなぁ…

残酷なことに生まれた時代と場所によって最初から不利な人たちが少なからずいて、ある意味安全圏で読むだけの私は胸が痛む。

 

彼が恵まれた体躯をバスケットに向けられていたら。器用なその手先をそのままナイフ制作に活かせたいたら。

 

彼にはいくつかのチャンスがあったような気がするけど、いつも彼の預かり知らぬところで悪へと舵を切らされる。

 

バルミロという、メキシコのヤクザがまじで非道なんだけど、彼は彼の神を信じている。

心臓を捧げちゃったりするのだ。

人間の臓器の心臓を。

 

土方コスモ はバルミロに神の子として愛されるが、コスモ は純粋すぎてバルミロが犯罪をおこなっていることに気づかず、本当に神さまのためにと思って沢山の人を殺す。

 

もう、登場人物がみな少しずつ狂っているのだ。

いい人は皆ちょっとだけ愚かで、なんでやーーってなるし、悪い人はどこまでも残酷で、なんでやーーってなる。

 

辟易するくらい沢山の人が死んだが最後は少しだか希望が持てる終わり方。

 

とっても怖いこの本を読了できたのは(というか最後までなんとか行ったくらいのレベルだが)Audibuleのサービスのおかげだと思う。

 

読んでもらうと、最後の子守唄のように続くおばあのお話がめちゃくちゃ心地よい。

 

多分、自分から進んでは読めなかったんじゃなかろうか。

まずね、本が重そうなんだもん。物理的に。そんなに長時間集中力も続かないし。